
紙には、それぞれに“性格”があります。
にじむ紙、凛とした線が出る紙、触れるとほっとする紙──。
同じ紙でも、その表情は驚くほど違います。
奉書紙、画仙紙、半紙、和紙。
身近な紙たちの違いや使い方を、やさしく、少し深くご紹介します。
ここから、紙の世界を一緒にのぞいてみましょう。
■ 奉書紙(ほうしょし)

● どんな紙?
室町時代には幕府の公文書に使われた、格式の高い紙。“奉る書”と書くように、もともと礼を尽くす文書に使われていました。現代では、
- 祝儀袋の短冊
- 礼状
- 目録
- のし紙
など、「きちんと感」を出したい場面で選ばれます。
● 特徴
- 表面はつるつる、裏面は少しざらつき
- 墨がにじみにくい
- 印刷にも筆書きにも向く
通常はつるつるした面を表として使いますが、
あえて裏面に書いて“にじみ”を楽しむ方もいるほど、紙の性格がはっきりしています。
■ 画仙紙(がせんし)

● どんな紙?
画仙紙は、書道の“作品用”として知られていますが、実は水墨画や絵手紙など、
墨を使う表現全般に広く使われる紙です。
条幅作品にも欠かせず、にじみやかすれの表情が豊かで、書家や画家がこだわる世界でもあります。
● 特徴
- 墨のにじみが出やすい
- 濃淡の表現が美しい
- 中国の宣紙がルーツ
よく見ると、**縦に細い筋(簀目)**が入っていることがあります。
これは紙を漉くときの竹簀の跡で、にじみや表情を生む大切な構造です。
● 画仙紙の“にじみ調整”
画仙紙には、
- にじみの強いタイプ
- にじみを抑えたドーサ引きタイプ
があります。
細字を書きたいときや、絵手紙・墨彩画などでにじみをコントロールしたいときに選ばれます。
● 絵手紙や色紙にも使われる
- 絵手紙用はがきの多くは、画仙紙ベース
- 色紙には「画仙紙貼り」「奉書紙貼り」があり、用途で選ばれます
■ 半紙(はんし)

● どんな紙?
書道の練習用として最も身近な紙。
実は「半紙」はサイズの呼び名で、原料によって性格がまったく違います。
● 原料で変わる“紙の性格”
楮(こうぞ)
- 繊維が太く長い
- 丈夫で裏抜けしにくい
- 力強い漢字に向く
三椏(みつまた)
- 繊維が細かく密
- もともとにじみにくい素材
- かな文字に向く
- 日本のお札の原料でもある
雁皮(がんぴ)
- さらに細かく光沢が強い
- にじみにくく裏抜けしにくい
- 写経や細字に最適
● 半紙にドーサ引きはある?
書道用半紙では、ドーサ引きはほとんど存在しません。
理由は、原料そのものがにじみにくい性質を持っているためです。
(※日本画用の和紙を半紙サイズに裁断した“ドーサ引き紙”はありますが、書道用半紙とは別物です。)
■ 和紙(わし)

● どんな紙?
日本の伝統的な紙の総称。
原料の繊維が長いため、薄くても驚くほど丈夫です。
奈良の正倉院には、千年以上前の和紙が今も残っていると言われています。
● 特徴
- 手漉きと機械漉きで風合いが違う
- 破れにくく、長持ち
- ラッピング・手紙・工作・アートなど用途が広い
● パルプとの違い
洋紙の主原料であるパルプは繊維が短く、
- 大量生産向き
- にじみにくい
- ただし強度は和紙に劣る
和紙は楮・三椏・雁皮などの長い繊維を使うため、
- 薄くても強い
- 長期保存に向く
- 風合いが豊か
■ 紙の小話

● 鳥の子紙
雁皮(がんぴ)を中心に作られる高級料紙で、表面がとてもなめらか。
墨がにじみにくく、裏抜けしにくい性質があります。
伝統的には“鳥の卵の殻”のような淡い黄味のある色が多いですが、
現代では白い鳥の子紙も一般的です。
色紙や短冊にもよく使われ、上品な仕上がりが特徴です。
● 麻紙
麻の繊維を使った丈夫な紙。
古文書の修復にも使われるほど耐久性が高く、独特の風合いがあります。
● ドーサ引き
にじみを抑えるために紙の表面に“にかわ+明礬”を引く工程。
日本画や墨彩画では一般的ですが、書道用半紙ではほとんど使われません。
■ まとめ:どんな時にどの紙を選ぶ?
| シーン | おすすめの紙 | 理由 |
|---|---|---|
| 礼状・目録・贈り物 | 奉書紙 | 格式と上品さが出る |
| 書道作品 | 画仙紙 | 滲み・濃淡の表現が豊か |
| 書道の練習 | 半紙 | 原料で性格が選べる |
| ラッピング・手紙・工作 | 和紙 | 温かみと丈夫さが魅力 |
| 色紙・短冊 | 鳥の子紙・奉書紙・画仙紙 | 仕上がりの雰囲気で選べる |
■ おわりに
紙の種類を知ると、選ぶ楽しさがぐっと広がります。
用途に合わせて紙を使い分けると、作品や贈り物の印象も大きく変わります。
いでかみの店頭でも、用途に合わせた紙選びのお手伝いができますので、気軽に声をかけてくださいね。
投稿者プロフィール
- 紙と文具の「いでかみ」は、創業以来、和(なごみ)の心を大切に、人々に親しまれてきた和文具、和雑貨を真心込めて提供してきました。「いでかみ」では入口に入った瞬間に「わくわく、ドキドキ」する様な 品揃え、サービスを御提供出来ればと日々考えております。 最新アイテムや旬な商材をいち早く展開するとともに、 独自セレクションの「おもしろアイテム」や「いい商品」を常に探して御提案いたします。


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